AIエージェント開発の外注・内製・既製品|選び方と契約の注意点
・ Employee Store 運用局

この記事のまとめ
AIエージェントを手に入れる方法は、開発会社への外注、社内での内製、出来上がった既製品の導入の3つです。この記事では、それぞれが向いている場合と、外注するときに契約で決めておくことを、経済産業省とIPAの公表資料に沿って説明します。
この記事の契約に関する内容は、2026年10月2日に経済産業省、IPA(情報処理推進機構)、総務省の公表資料で確かめたものです。個別の契約は、法務の担当者や弁護士と確かめてください。
AIエージェントの開発を外注するか迷ったら、まず「自社だけの仕組みが要るのか」を考えます。同じ業務を多くの会社がしているなら、既製品で足りることがあります。自社の業務の進め方そのものが強みなら、作る価値があります。
3つの手に入れ方
外注
- 開発会社が自社向けに作る
- 仕様と契約を詰める手間がかかる
- 保守を誰が持つか決める
内製
- 社員が作って動かす
- 作る人と直し続ける人が要る
- 業務の知識を生かしやすい
既製品
- 出来上がったものを導入する
- 早く試せる
- 自社の業務に合うかを確かめる
経済産業省のAIの利用・開発に関する契約チェックリスト(令和7年2月)は、AIを使う取引を3つの型に分けています。汎用的なAIサービスをそのまま使う型、提供者が自社向けに調整したサービスを使う型、開発会社と組んで独自のAIシステムを作る型です。この記事の分け方に当てはめると、既製品の導入はおおむね1つ目か2つ目、外注は2つ目か3つ目に当たります。
チェックリストは、開発を伴わない契約を利用型契約、何らかの開発を伴う契約を開発型契約と呼んでいます。開発型契約に特有の要素は必ずしも多くなく、利用型契約の一般的な条項に開発の要素を加えれば、おおむね検討できると説明しています。
外注:向いている場合と費用の考え方
外注が向いているのは、自社だけの業務の流れや社内システムに合わせる必要があり、社内に作る人がいない場合です。AI社員の制作を請け負う開発会社に頼むと、要件の整理から開発、導入まで任せられます。開発会社や開発を手がける企業を選ぶときは、似た業務での開発経験、試しに動かせる環境を用意してもらえるか、公開後の保守を担う体制があるかを確かめます。
AIエージェント開発の費用は、作る範囲と契約の形で変わります。見積もりを比べるときは、総額より内訳を見ます。
- 開発の費用:作業の時間に対して払うのか、完成した成果物に対して払うのか
- 動かす費用:サーバー、外部のAIのAPI利用料、使っているツールの料金を誰が払うか
- 直し続ける費用:公開後の修正や、業務が変わったときの改修を誰がいくらで行うか
AIエージェントは、使うAIモデルや連携するツールが変われば直す必要が出ます。開発の費用だけで判断せず、動かし続ける費用まで含めて比べます。
契約書を一から作る必要はありません。IPAの情報システム・モデル取引・契約書(第二版)は、発注する会社と開発会社が開発の段階ごとに持つ責務の解説と、契約書のひな型を公開しています。IPAは、発注側と受注側のどちらにも有利に偏らない契約書を目指したと説明しています。第二版では、セキュリティ、プロジェクトマネジメントの義務と協力の義務などが見直されました。費用の内訳の考え方はAIエージェントの費用で説明しています。
内製:必要な人と時間
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは、AIに関わる事業者を、AIシステムを作るAI開発者、システムをサービスとして提供するAI提供者、業務で使うAI利用者に分けています。内製すると、この3つの役割をすべて自社で持つことになります。
- 作る人:AIモデルやツールの選定、連携の実装、試験
- 動かす人:日々の稼働の確認、止まったときの対応、利用者への注意喚起
- 業務を知る人:任せる手順と、人が確認する点を決める
内製の利点は、業務を知る人のすぐ近くで直せることです。その代わり、作った人が異動や退職をすると止まりやすくなります。手順書を残し、2人以上が直せる状態にしておきます。
内製といっても、すべてを一から作るとは限りません。AI事業者ガイドラインの別添は、AIエージェントの作成サービスを使い、利用者が業務の流れに沿ったワークフローを自分で組んでエージェントを作る例を挙げています。この例では、作った会社はAIを使う立場であると同時に、作ったエージェントの保守と運用も担う立場になると整理されています。作成サービスを使う場合も、動かし続ける役割は自社に残ると考えておきます。社員の育て方はAIエージェントの研修が参考になります。
既製品の導入:早く試せる代わりに確かめること
既製品は、出来上がったものをすぐに試せます。自社で作る前に既製品で小さく試すと、本当に作る必要があるかを見極める材料にもなります。その代わり、次の点を確かめます。
- 任せたい手順と、既製品が想定している手順が合っているか
- 入力したデータを提供者が学習に使うか。保持の期間と消去はどうなるか
- 利用規約がどう変わり得るか。変更をどう知らされるか
チェックリストは、利用規約に基づくサービスでは規約が定期的に変わり得るため、変更を随時確かめるよう注意しています。比べ方の詳細はAIエージェントの比較のしかたにまとめています。
外注するときの契約で決めること
外注の契約では、作業と成果物、入力するデータ、出来たものの権利の3つを先に決めます。契約チェックリストは、契約で扱う情報を、AIに渡すインプットと、AIが出すアウトプットに分け、それぞれ定義、提供、利用、外部への提供、権利の帰属を確かめるよう整理しています。
準委任か請負か
チェックリストによると、開発の契約では、準委任契約か請負契約かが交渉の論点になることがあります。準委任契約では、開発会社は善管注意義務を負います。請負契約では、仕事を完成させる義務と、契約不適合責任を負います。チェックリストは、契約の型を抽象的に議論するより、成果の内容や水準をどこまで求めるかが重要な論点になることが多いとしています。
AIモデルを直接作る場合について、チェックリストは、経済産業省のAI・データの利用に関する契約ガイドラインAI編を引き、完成の義務や性能の保証を決めるのは必ずしも容易でないと説明しています。AIの出す結果は、学習や入力のデータによって変わるためです。
作りながら直す開発の契約
AIエージェントは、試しながら直す進め方が合うことが多くあります。IPAの情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)は、機能の追加や変更に柔軟に対応するため、完成に対価を払う請負契約ではなく、準委任契約を前提にしています。IPAは、発注する側にも、プロダクトの方向と内容を決めるための主体的な関与が必要で、相応の負担が伴うと書いています。
アジャイル開発版には、契約の前に両者で確かめる契約前チェックリストが付いています。プロジェクトの目的やゴールが明確か、関係者の範囲がはっきりしているか、作るもののビジョンを関係者と共有できているかなどを確かめる内容です。AIエージェントの外注でも、そのまま使える問いです。
- 成果物:何を、いつまでに、どの水準で受け取るか。検収の方法
- 入力するデータ:開発会社が自社の技術の開発に使ってよいか。使う場合の範囲
- 出来たものの権利:プログラム、設定、学習用に作ったデータを誰が持つか。他社に使い回せるか
- 保守:公開後の修正、APIの変更への対応、費用
チェックリストは、開発の契約では、開発会社がサービスの提供を超えて自社の技術開発に入力データを使いたいと求めることがあると書いています。認めるか、認めるならどの範囲かを決めておきます。顧客の個人データを渡す場合は、特に注意が要ります。チェックリストは、開発会社が自分の目的でデータを使うことや、ほかのデータと突き合わせることを認めると、委託として整理できず第三者への提供に当たり、本人の同意が必要になる可能性があると書いています。受託で開発する側の視点はAIエージェントの開発案件で説明しています。
判断の分かれ道を図で整理
任せたい業務に、自社だけの仕組みが要るか
どれを選んでも、最初から大きく作らないことが共通の注意点です。既製品で試し、足りない部分が見えてから外注や内製で補うと、作る範囲を絞れます。
Employee Store は、開発者が作ったAIエージェント(AI社員)を、会社が導入できるマーケットプレイスです。価格は買い切り、月額、初期費用+月額のいずれかで、出品ページで仕事内容、対応ツール、納品内容を確かめてから導入できます。購入前に「雇う前に質問する」から出品者に質問でき、納品は取引ルームで受け取ります。
よくある質問
- AIエージェントの開発は外注と内製のどちらがよいですか?
- 自社だけの仕組みが要り、作る人が社内にいなければ外注、業務の知識があり作って直し続ける人を置けるなら内製が向きます。多くの会社と同じ業務なら、まず既製品で試すと、作る必要があるかを見極められます。
- AIエージェント開発を外注するとき、契約で何を決めればよいですか?
- 成果物と検収、入力するデータの使い方、出来たものの権利、保守の4つです。経済産業省の契約チェックリストは、AIに渡すデータとAIが出す結果について、定義、利用、外部への提供、権利の帰属を確かめるよう整理しています。
- AIエージェントの開発は請負契約にできますか?
- できますが、チェックリストは、AIモデルを作る場合は完成の義務や性能の保証を決めるのが必ずしも容易でないと説明しています。試しながら直す進め方なら、IPAのアジャイル開発版モデル契約のように準委任契約を前提にする方法もあります。


