AIエージェントとRAGの違い|社内資料を使うAIの仕組みと組み合わせ方
・ Employee Store 運用局

この記事のまとめ
RAGは、資料を探してから答える仕組みです。AIエージェントは、調べたうえでツールを動かし、仕事を終えるまで進む仕組みです。2つは対立するものではなく、RAGはAIエージェントの部品としても使われます。この記事では違いと組み合わせ方、社内資料を使うときに決めることを説明します。
この記事の内容は、2026年10月2日に各社の公式ドキュメントと公的資料で確かめたものです。製品の機能は変わることがあります。末尾の出典から最新の内容を確かめてください。
AIエージェントとRAGの違いは、仕事の終わり方にあります。RAGは答えを返したところで終わります。AIエージェントは、答えをもとに次の操作まで進みます。
RAGとは:資料を探してから答える仕組み
RAGは Retrieval-Augmented Generation の略で、日本語では検索拡張生成と呼ばれます。LLMが学習した内容だけに頼らず、手元の資料を探して、その内容をもとに答えを作ります。Dify の公式ドキュメントは、RAGを次の3つの段階で説明しています。
- 1検索質問に関係する部分を、取り込んだ資料から探す
- 2補強見つけた内容を、元の質問と一緒にLLMへ渡す
- 3生成LLMが、渡された内容をもとに答えを作る
AI事業者ガイドライン(第1.2版)は、RAGの活用などにより、もっともらしい誤り(ハルシネーション)の抑制や、答えの根拠の透明性の向上が期待されていると書いています。一方で、RAGを使うと回答が似通っていく可能性が高いとも書いています。そのため、多様さや独創性が求められる仕事には、RAGが適さない場合もあるとしています。
この記事では、RAGで探す資料の集まりをナレッジと呼びます。Dify でも、自社のデータを集めてAIアプリに組み込むものをナレッジと呼び、RAGの仕組みで使っています。
Dify の公式ドキュメントは、ナレッジの使い道として、製品資料やよくある質問から答える問い合わせ用のチャットボット、社内規程や手順を探せる社内向けの検索と質問応答などを挙げています。どれも、答えの元になる資料が手元にある仕事です。
AIエージェントとは:調べて動いて仕事を終える仕組み
AI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIエージェントを、特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステムと定義しています。Anthropic は、エージェントの土台を、検索、ツール、記憶で強化したLLMだと説明しています。
Anthropic によると、今のモデルは、検索の言葉を自分で作り、合う道具を選び、何を覚えておくかを決めるところまで、これらの力を使えます。RAGでは人が決めた流れで検索しますが、AIエージェントでは、何を探すかもAIが決められます。
つまり、検索はAIエージェントが持つ部品の1つです。AIエージェントは、検索の結果を読んだうえで、表への書き込み、メールの下書き、別のツールの呼び出しなどに進みます。そして、終わりと判断するまでこれを繰り返します。部品とループの流れは、AIエージェントの仕組みで説明しています。
違いを表で比べる
| 比べる点 | RAG | AIエージェント |
|---|---|---|
| 目的 | 資料にもとづいて答える | 目標に向けて仕事を進める |
| 流れ | 検索、補強、生成の順で1回進む | 考える、ツールを使う、結果を読むを繰り返す |
| 終わり方 | 答えを返して終わる | 仕事が終わったと判断して終わる |
| 外への操作 | 基本はしない | ツールを通じて書き込みや送信をすることがある |
| 準備するもの | 資料、取り込みと検索の設定 | LLM、ツール、権限、記憶、止める条件 |
| 主な注意点 | 資料の古さ、検索の外れ、見せてよい範囲 | 加えて、意図しない操作と、渡す権限の広さ |
どちらを使うかは、答えがほしいのか、答えの先の作業まで任せたいのかで決まります。Anthropic は、多くの場合、AIを1回呼ぶ形に検索や例を足して整えれば十分だと書いています。答えを返すだけで済む仕事なら、エージェントにしない方が単純です。
一方で、1回の検索では足りない仕事もあります。Anthropic は、何度も検索と分析を重ねる複雑な調べものを例に挙げています。この形では、別のLLMが結果を評価し、さらに検索が要るかを判断します。複数の情報源から関係する情報を集めて分析する検索も、仕事を分けて任せる形の例として挙げています。こうした仕事では、RAGを何度も呼ぶAIエージェントが向きます。
RAGをAIエージェントの道具として使う形
AIエージェントは、RAGを道具の1つとして持てます。Dify の Agent では、アプリにナレッジベースを足すと、質問ごとにモデルがナレッジベースの説明を読み、検索が要るかを判断します。説明が詳しいほど、判断が正確になると公式ドキュメントに書かれています。
n8n にも、資料を探して答える部品があります。Question and Answer Chain は、ベクトルストアにつないで、特定の文書についての質問に答えるワークフローを作れます。ただし n8n のチェーンは記憶を使えないため、前の質問を覚えた会話を続けたいときは、エージェントを使うよう公式ドキュメントに書かれています。
社内資料を使って、何をしたいか
組み合わせると、注意点も足し算になります。OWASP の資料は、RAGをエージェントの中心的な仕組みの1つとしたうえで、資料に悪意のある内容を混ぜる攻撃や、資料を通じた間接的な指示の書き換えを挙げています。対策として、利用者の権限に合わせて検索の範囲をしぼる仕組み、取り込むデータの検証、汚染がないかの継続的な監視を示しています。
AIエージェントでは、探した資料の中身が次の行動につながります。資料に紛れた指示を読んで、意図しない送信や書き込みをしないよう、外に影響が出る操作の前に人の承認を挟む設計が向いています。
社内資料を使うときに決めること
- 入れる資料:どの資料を入れ、古い版をどう外すか
- 見せてよい範囲:誰が使うAIに、どの資料を探させてよいか
- 個人情報:資料や質問に個人情報が入るか
- 更新の担当:資料が変わったとき、誰がナレッジを直すか
- 根拠の表示:答えにどの資料を使ったかを表示するか
- 確かめ方:よくある質問で、狙った資料が見つかるかを試すか
Dify には、取り込んだ文書やチャンクを見直して追加・修正・削除する画面と、質問を入れて検索の結果を試す機能があります。資料の更新と検索のテストを、運用の手順に入れておくと、古い資料からの答えを減らせます。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると、法律に違反するおそれがあるとしています。そのため、提供事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを確かめるよう求めています。
Difyのナレッジで見るRAGの例
Dify のナレッジベースの作り方は3つあります。資料を取り込んで設定を選ぶだけの方法、取り込みの処理を自分で組み立てる方法、外部にあるナレッジベースにAPIでつなぐ方法です。すでに別の場所に資料の検索の仕組みがある会社は、移さずにつなぐこともできます。
Dify では、ナレッジベースを作り、資料を取り込み、アプリにつなぐ流れでRAGを組みます。取り込んだ資料は、チャンクと呼ばれる小さな単位に分けて保存されます。分け方の方式は、ナレッジベースを作った後には変えられません。区切りの文字やチャンクの長さは、後から変えられます。
チャンクは、大きな本を章や段落に分けるようなものだと説明されています。質問が来ると、チャンクの中から関係する部分を探し、LLMに渡します。分け方には、同じ設定で分ける方式と、小さなチャンクで探して、それを含む大きなチャンクを返す方式があります。
検索の設定では、意味の近さと語句の一致の重みを決めるか、並べ替え用のモデルを使うかを選びます。重みで決める方式は、外部のモデルを使わないため追加の費用がかかりません。並べ替え用のモデルは、外部の提供元のAPIキーが要り、費用が追加でかかります。返す件数(TopK)の初期値は3です。似ている度合いの下限を決めて、関係の薄い結果を外すこともできます。
答えにどの資料を使ったかを示す引用の表示も、機能として足せます。資料に情報を付けておけば、探す範囲を特定の文書にしぼることもできます。
Chatflow に知識検索ノードを置く
- 決めた流れの中で、質問をもとに検索する
- 検索結果を次のLLMノードに渡す
- ノードごとに並べ替えや件数を設定できる
Agent にナレッジベースを足す
- 検索が要るかをモデルが判断する
- どのナレッジベースを探すかもモデルが選ぶ
- アプリ全体の検索設定はなく、複数の結果の並べ替えもしない
Dify の設定の詳しい手順はDifyのナレッジの使い方で、問い合わせ対応での使い方はヘルプデスクのAIエージェントで扱います。
Employee Store で社内資料を使うAI社員を選ぶ
Employee Store は、開発者が作ったAIエージェント(AI社員)を、会社が導入できるマーケットプレイスです。価格は買い切り・月額・初期費用+月額のいずれかで、決済は Stripe で行われます。
カテゴリには、カスタマーサポート、バックオフィス、営業支援などがあります。社内資料を使うAI社員を選ぶときは、掲載ページで、資料をどこに取り込むか、答えを返すだけか、記録や送信まで進むかを確かめます。購入後は、取引ごとのページで出品者とメッセージをやり取りし、上の6つの点を擦り合わせられます。
よくある質問
- RAGを入れれば、AIは間違えなくなりますか?
- なくなりはしません。AI事業者ガイドラインは、RAGの活用などでハルシネーションの抑制が期待されていると書いています。ただし、資料が古い場合や、検索で関係のない部分を拾った場合は、誤った答えになります。
- AIエージェントにはRAGが必ず要りますか?
- 必ずではありません。社内資料にもとづいて判断する仕事なら、RAGを道具として持たせます。資料を使わない仕事や、資料が少なく指示に直接含められる場合は、RAGを組まなくても動きます。
- Dify のナレッジとRAGは同じものですか?
- Dify のナレッジは、自社のデータを集めてAIアプリに組み込む機能です。公式ドキュメントは、この機能をRAGの仕組みで実現していると説明しています。
出典
- Dify Docs「Knowledge」(2026年10月2日確認)
- Dify Docs「Knowledge Retrieval」
- Dify Docs「Agent」
- Dify Docs「Configure the Chunk Settings」
- Dify Docs「Integrate Knowledge within Apps」
- Dify Docs「Maintain Knowledge Documents」
- Dify Docs「Test Knowledge Retrieval」
- Dify Docs「Metadata」
- n8n Docs「What chains do」
- Anthropic「Building effective agents」
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編(令和8年3月31日)
- OWASP GenAI Security Project「Agentic AI – Threats and Mitigations」
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF)


