AIエージェントの仕組み|LLM・ツール・記憶の役割を図解
・ Employee Store 運用局

この記事のまとめ
AIエージェントは、指示を受けてから仕事を終えるまで、考える、道具を使う、結果を読む、という流れを繰り返します。この記事では、その中で動いている4つの部品と、ループの流れを図で説明します。仕組みが分かると、任せやすい仕事と注意が要る仕事も見分けやすくなります。
この記事の内容は、2026年10月2日に各社の公式ドキュメントと公的資料で確かめたものです。製品の機能は変わることがあります。末尾の出典から最新の内容を確かめてください。
AIエージェントの仕組みは、部品に分けて見ると分かりやすくなります。この記事では、構成要素をLLM、ツール、記憶(メモリ)、計画と実行のループの4つに分けて説明します。
AIエージェントは4つの部品でできている
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIエージェントを、特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステムと定義しています。ここでの自律には、高度な自律だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含まれます。
Anthropic は、エージェントの土台を、検索、ツール、記憶で強化したLLMだと説明しています。そのうえで、エージェントは多くの場合、周りから返ってくる結果をもとにツールを使うLLMを、ループで動かすものだと書いています。
LLMにツールと記憶を足し、終わるまでループで動かすイメージ図
要素技術で言えば、言語モデル、ツールの呼び出し、履歴の保存の3つが土台です。4つ目の部品であるループは、ほかの3つをつなぐ流れです。LLMが次の手を決め、ツールが動き、結果が記憶に残り、またLLMが考えます。以下で1つずつ見ていきます。
LLM:考えて次の手を決める部分
LLMは、大量の文章から学習した言語モデルです。AIエージェントの中では、指示と今の状況を読み、次に何をするかを決める役を持ちます。答えを返すのか、ツールを呼ぶのかを選ぶのもLLMです。
OWASP の資料は、今のエージェントはLLMを推論の中心に使い、アプリの処理の流れをLLMに決めさせていると説明しています。Dify の公式ドキュメントも、エージェントには推論が得意で、ツール呼び出しにネイティブで対応したモデルを選ぶよう勧めています。
Dify では、選んだモデルによってエージェントの動かし方が変わります。ツール呼び出しにネイティブで対応したモデルは Function Calling の方式で、直接ツールを呼びます。対応していないモデルは ReAct の方式で動き、Dify がプロンプトの工夫でツールを使わせます。いつ、どのツールを使い、結果をどう読むかは、モデルの推論の力に左右されます。
LLMの出力には注意点もあります。個人情報保護委員会は、生成AIの応答は確率的な相関関係にもとづいて作られるため、不正確な内容が含まれることがあると注意を呼びかけています。AIエージェントでは、この出力が次の行動につながります。
ツール:検索・ファイル・外部サービスを動かす部分
LLMだけでは、文章を返すことしかできません。ツールを持たせると、Webの検索、計算、コードの実行、外部サービスのAPIの呼び出しができるようになります。OWASP の資料は、こうしたツールの利用をエージェントの中心的な能力の1つに挙げています。
- n8n:AI Agent ノードには、ツールを1つ以上つなぐ必要がある。HTTP Request、別のワークフローの呼び出し、コードの実行などをツールにできる
- OpenAI Agents SDK:Python の関数を、そのままエージェントのツールにできる
- MCP:エージェントとツールをつなぐための共通の取り決め。OWASP の資料は、エージェント側をクライアント、ツール側をサーバーとして説明している
ツールは、説明の書き方で使われ方が変わります。Anthropic は、ツールの定義にもプロンプト全体と同じだけの手間をかけるよう勧めています。同社がコーディング用のエージェントを作ったときは、プロンプト全体よりもツールの改善に多くの時間を使ったと書いています。
たとえば、作業の場所を移した後に、相対的なファイルの場所を指定するツールでモデルが間違えました。そこで、ツールが常に絶対的な場所を受け取るように変えたところ、間違えずに使えたといいます。モデルの立場で読んで使い方が分かる説明にすること、間違えにくい引数にすることが勧められています。
記憶:会話と過去の結果を持ち越す部分
記憶は、各社のドキュメントでは memory(メモリ)と呼ばれます。記憶の仕組みがないと、AIとのやり取りは毎回最初からになります。n8n の公式ドキュメントは、記憶を、前のメッセージの履歴を持ち、会話を続けられるようにするものだと説明しています。
OWASP の資料は、記憶を2つに分けています。1回の会話の中だけで使う短期の記憶と、会話が終わっても残す長期の記憶です。記憶には、会話だけでなく、呼んだツールや取り出した情報も入ります。
| ツール | 記憶の仕組み | 公式ドキュメントの説明 |
|---|---|---|
| OpenAI Agents SDK | Sessions | 実行の前に会話の履歴を取り出して入力に足し、実行の後に新しいやり取りやツールの呼び出しを保存する |
| n8n | Simple Memory など | 今のセッションの会話履歴を、決めた長さだけ保存する。Redis や Postgres に保存するノードもある |
| Dify(Agent) | 会話の履歴 | 1つの会話で最大500メッセージまたは2,000トークンまで持つ。超えると古いものから消える |
n8n では、チェーンと呼ばれる部品は記憶を使えません。会話を続けたいときはエージェントを使うよう、公式ドキュメントに書かれています。
記憶は便利な一方で、何を残すかを決める必要があります。会話の中に個人情報や社外秘の内容が入れば、それも保存されます。OWASP の資料は、記憶に誤った内容や悪意のある内容を混ぜる攻撃を、エージェントの主な脅威の1つに挙げています。誤った情報が記憶やツールの利用を通じて広がり、間違いが積み重なるおそれも指摘しています。
計画と実行のループ:終わるまで繰り返す流れ
ループは、AIエージェントが仕事を進める流れそのものです。OpenAI Agents SDK の公式ドキュメントは、この流れを次のように説明しています。
- 11. 指示を受け取る人の依頼や、時刻・出来事がきっかけになる
- 22. LLMが次の手を決める答えを返すか、ツールを呼ぶかを選ぶ
- 33. ツールを動かす検索、ファイル、外部サービスなど
- 44. 結果を読んで足すツールの結果を次の入力に加える
- 55. 終わりか判断する終わりでなければ2に戻る
終わりと判断するまで、2から5を繰り返す
OpenAI Agents SDK では、ツールの呼び出しがなく、決めた形の文章が出たときに、最終の出力として扱います。決めた回数を超えると、ループは止まります。Dify の Agent にも、考える、ツールを呼ぶ、結果を処理する、という繰り返しの上限を決める設定があります。上限を上げると複雑な仕事に対応できますが、待ち時間と利用料が増えます。
n8n の公式ドキュメントも、ワークフローを1回動かす間に、エージェントは何度も動くと説明しています。最初の準備、ツールの呼び出し、ツールの結果の評価、利用者への返答、というように回数を重ねます。
Anthropic は、エージェントが1歩ごとにツールの結果などから実際の状況を確かめることを勧めています。区切りの場面や行き詰まったときに、人の判断を仰ぐ形もあります。n8n では、特定のツールを動かす前に人の承認を求められます。承認されれば動き、却下されれば取りやめます。
仕組みから分かる得意・不得意
LLMが手順をその場で決めるため、AIエージェントは毎回少しずつ違う仕事に強くなります。一方で、同じ理由から、動きを前もって読みにくくなります。
向いている
- 必要な手順の数が毎回変わる仕事
- ツールの結果を見て次の手を変える仕事
- 結果が正しいかを確かめられる仕事
注意が要る
- 毎回同じ手順で終わる仕事
- 間違いが後の手順に積み重なる長い仕事
- 取り消せない操作を含む仕事
Anthropic は、手順が決まっている仕事には、予測しやすいワークフローを勧めています。エージェントは自律して動くぶん費用が増え、間違いが積み重なるおそれもあります。そのため、隔離した環境で十分に試し、安全のための仕組みを入れるよう勧めています。
同社は、エージェントが特に役立つ仕事の条件も挙げています。会話と操作の両方が要ること、成功の基準がはっきりしていること、結果を見て直せること、人が意味のある形で見守れることです。この4つは、ループの仕組みがうまく働くための条件と言い換えられます。
AI事業者ガイドラインの別添は、AIエージェントが自律的な動作の中で、人の意図しない商品の注文やファイルの削除をする可能性を挙げています。対策として、人の判断を挟む仕組み、必要最小限の権限、定期的な操作履歴の確認が追記されました。
手順をAIに任せるか人が決めるかの違いは、AIエージェントの種類で整理しています。社内資料を探して答える仕組みとの違いは、AIエージェントとRAGの違いをご覧ください。
Employee Store でAI社員を選ぶとき
Employee Store は、開発者が作ったAIエージェント(AI社員)を、会社が導入できるマーケットプレイスです。価格は買い切り・月額・初期費用+月額のいずれかで、決済は Stripe で行われます。
選ぶときは、4つの部品ごとに次の点を掲載ページで確かめます。
- LLM:どのモデルを使い、利用料を誰が払うか
- ツール:どのサービスにつなぎ、読むだけか、書き込みや送信までするか
- 記憶:何を残し、どこに保存するか
- ループ:繰り返しの上限と、人の承認で止まる場面
購入後は、取引ごとのページで出品者とメッセージをやり取りし、納品物の確認と受領ができます。AI社員の考え方はAI社員とはで説明しています。
よくある質問
- AIエージェントとLLMは同じものですか?
- 違います。LLMは、文章を読んで次の手を決める部品です。AIエージェントは、LLMにツールと記憶を足し、終わるまでループで動かす仕組み全体を指します。
- AIエージェントは会話をずっと覚えていますか?
- 記憶の仕組みと設定によります。たとえば Dify の Agent は、1つの会話で最大500メッセージまたは2,000トークンまで履歴を持ち、超えると古いものから消えます。会話の外まで残すには、長期の記憶を保存する仕組みが要ります。
- AIエージェントが止まらなくなることはありませんか?
- 多くのツールには、ループの回数の上限があります。OpenAI Agents SDK では決めた回数を超えると止まり、Dify の Agent にも繰り返しの上限の設定があります。取り消せない操作の前に、人の承認を挟む形もあります。
出典
- 総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編(令和8年3月31日)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」別添
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容」
- Anthropic「Building effective agents」(2026年10月2日確認)
- OpenAI Agents SDK「Intro」(2026年10月2日確認)
- OpenAI Agents SDK「Running agents」
- OpenAI Agents SDK「Sessions」
- n8n Docs「AI Agent node」
- n8n Docs「How tools work」
- n8n Docs「How memory works」
- n8n Docs「What chains do」
- n8n Docs「Human-in-the-loop for tools」
- Dify Docs「Agent」(2026年10月2日確認)
- OWASP GenAI Security Project「Agentic AI – Threats and Mitigations」
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF)


