AIエージェントの運用保守|納品後の監視・更新・サポート範囲の決め方
・ Employee Store 運用局

この記事のまとめ
AIエージェントは、納品した後も、AIモデルの提供終了や連携先の変更で動きが変わります。この記事では、納品後に起きやすいこと、監視する項目、更新の進め方、サポート範囲と月額の決めごとを、公的な資料と各社の公式文書をもとに説明します。
AIエージェントの運用保守は、納品の前に決めておくと、後のやり取りが楽になります。何が起きたら誰が対応するのかが決まっていないと、小さな不具合でも相手との調整に時間がかかります。この記事では、AIエージェントの開発と運用を受ける側の目線で、決めておくことを順に説明します。
この記事の内容は、2026年10月2日に総務省・経済産業省の公開資料と、各社の公式ドキュメントで確かめたものです。各社の方針は変わることがあります。使う前に、末尾の出典から最新の内容を確かめてください。
納品後に起きやすいこと:モデル更新・API変更・データ変化
納品した時点で正しく動いていても、外側の変化で結果が変わることがあります。主な原因は次の3つです。
AIモデルの提供終了
AIモデルの提供元は、古いモデルを順に終了します。OpenAI は、一般提供のモデルは少なくとも6か月前、特化した派生モデルは少なくとも3か月前に知らせるとしています。名前に preview が付くモデルは、2週間程度のより短い予告で終わることがあると書かれています。Anthropic は、公開しているモデルについて、少なくとも60日前に知らせるとしています。Anthropic のドキュメントは、Claude Console の利用状況を書き出すと、APIキーとモデルごとの利用が分かると説明しています。予告されたモデルを使っている箇所を探すときに役立ちます。納品したAIがどのモデルを使っているかは、一覧にして控えておきます。
モデルだけでなく、機能が終わることもあります。OpenAI は、カスタムGPT(GPTs)を2026年12月11日に提供終了する予定です。延期が承認された Enterprise のワークスペースは2027年2月11日です。
連携先のAPIと規約の変更
経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、利用規約が定期的に変わりうるため、変更の状況を随時確かめるよう求めています。汎用のAIサービスをもとに作ったサービスでは、もとのサービスの規約の変更に合わせて、自分のサービスの規約も変える必要が出る場合があるとしています。
データの変化
相手の会社の業務やデータが変わると、同じ仕組みでも結果が変わります。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AI提供者に、提供後も適切な目的で使われているかを定期的に検証することを求めています。
何が起きたか
監視する項目とログ
AI事業者ガイドラインは、検証できるようにするため、合理的な範囲で利用時の入出力などのログを記録・保存することを挙げています。記録の方法、頻度、保存期間は、事故の原因究明や再発防止に必要かどうかを踏まえて決めるとしています。
| 監視する項目 | 見るもの | 使える機能の例 |
|---|---|---|
| 実行の成否 | 失敗した実行の数と、止まった場所 | n8n の実行一覧(失敗・実行中・成功・待機で絞り込める)、エラーワークフロー |
| 応答の時間と費用 | 1回あたりの時間とトークンの量 | Dify のログ(メッセージごとのトークン消費と応答時間) |
| 出力の質 | 利用者の評価、誤りの例 | Dify のログの評価とコメント、Langfuse の評価 |
| しきい値を超えたときの通知 | 失敗や費用が決めた値を超えたか | n8n のエラーワークフロー、Langfuse のアラート |
n8n では、ワークフローごとにエラーワークフローを設定できます。実行が失敗すると、Error Trigger で始まる別のワークフローが動き、メールや Slack で知らせられます。Dify のログでは、ワークフローの実行ごとに、ノード単位の実行の記録を見られ、どのノードで失敗や遅れが起きたかを探せます。
Langfuse は、オープンソースのAIエンジニアリングの基盤です。AIモデルの呼び出しや検索、API呼び出しを記録し、品質、費用、応答時間をダッシュボードで見られます。指標が決めた値を超えると、Slack や Webhook などで知らせるアラートの機能もあります。ドキュメントには n8n や Dify とつなぐ手順も載っています。
AIエージェントのモニタリングは、失敗を拾うだけでは足りません。AI事業者ガイドラインは、AIモデルの入出力と判断根拠を定期的に評価し、バイアスの発生をモニタリングすることも挙げています。月に1回など頻度を決めて、ログから出力の例を抜き出し、偏りや誤りの傾向を見ます。
ログには、相手の会社の情報や個人情報が含まれることがあります。Dify のドキュメントも、ログには会話の全文が含まれ、機密情報が含まれる場合があると注意しています。どのログを、どこに、どれだけの期間残すかは、相手と決めて契約に書きます。
更新の手順と知らせ方
更新は、本番で動いているものを直接変えず、試してから入れ替えます。
- 1変更を知る提供元の告知・監視の結果
- 2試験用の環境で直す
- 3評価用の例で比べる
- 4相手に内容と理由を知らせる
- 5本番に反映
- 6前の版に戻せるようにしておく
AI事業者ガイドラインは、AIシステムを更新した場合に、更新の内容とその理由を情報提供することを挙げています。いつ、何を、なぜ変えたかを、短い文で相手に送ります。出力の傾向が変わる更新なら、その点も書きます。ガイドラインは、提供後も攻撃の手法など最新のリスクの動向を確かめ、脆弱性への対応を検討することも挙げています。セキュリティの修正も、更新の対象に入れておきます。
前の版に戻せるようにする機能は、ツールにもあります。Dify の Chatflow と Workflow には、公開した版を記録し、以前の版を下書きに読み込み直す機能があります。n8n にも、ワークフローの変更履歴を見て、以前の版に戻す機能があります。評価用の例の作り方はAIエージェントの評価方法で説明しています。
サポート範囲の決め方と書き方
サポートの範囲は、範囲内と範囲外を並べて書くと、相手が判断しやすくなります。
範囲内の例
- 納品した仕組みの不具合の調査と修正
- AIモデルの提供終了に伴う切り替え
- 連携先のAPI変更への対応
- 使い方の質問への回答
範囲外の例
- 新しい機能の追加
- 対象の業務を広げること
- 相手が変えた設定が原因の不具合
- AIモデルやサービスの利用料
範囲に加えて、次の点も書きます。問い合わせを受ける方法と時間、返事をするまでの目安、緊急のときの連絡先、範囲外の作業の料金の決め方です。AIの出力の誤りを、どこまで不具合として扱うかも決めます。要件定義書で決めた評価用の例で測った結果を基準にすると、話が食い違いにくくなります。契約での決め方はAIエージェント開発案件の進め方で説明しています。
月額で提供する場合の決めごと
運用保守を月額で提供する場合は、月額に何が含まれるかを書きます。
- 含まれる作業:監視、問い合わせへの回答、決めた範囲の修正
- 含まれない費用:AIモデルの利用料、サーバー代。誰のアカウントで払うか
- 作業の上限:1か月に対応する件数や時間の目安
- 報告:何を、どのくらいの頻度で、どう伝えるか
- 解約:いつまでに申し出るか、解約後にデータやワークフローをどう扱うか
自分のAPIキーで動かす場合は、利用が増えるほど自分の支払いが増えます。相手のAPIキーで動かす場合は、その費用が相手にかかることを最初に伝えます。
Employee Store の取引ルームでのやり取り
Employee Store では、購入者と出品者が、取引ごとのページ(取引ルーム)でメッセージをやり取りします。納品物の確認、受領、評価、報告も取引ルームで行います。不具合の連絡や更新の知らせは、取引ルームのメッセージで送ると、その取引の記録としてまとまります。
価格は、買い切り、月額、初期費用+月額から選べます。決済は Stripe で行われます。月額の解約は、購入者が取引ルームの契約管理から行い、次回の課金が止まります。日割りの返金はありません。月額で出品する場合は、月額に含まれるサポートの範囲を出品ページに書いておきます。書き方はAIエージェントの説明の書き方、取引の流れはEmployee Store の使い方をご覧ください。
よくある質問
- AIモデルの提供終了に伴う切り替えは、保守の料金に含めるべきですか?
- 決まりはありません。納品の前に、提供終了に伴う切り替えをサポートの範囲に入れるかどうかを決めて、契約や出品ページに書いておきます。OpenAI は一般提供のモデルを6か月以上前に、Anthropic は公開モデルを60日以上前に知らせるとしています。
- ログはどれくらいの期間残せばよいですか?
- 一律の決まりはありません。AI事業者ガイドラインは、記録の方法、頻度、保存期間を、事故の原因究明や再発防止に必要かどうかを踏まえて決めるとしています。個人情報を含む場合は、相手と期間を決めて契約に書きます。
- 運用保守は月額と都度払いのどちらがよいですか?
- 監視や問い合わせの対応が毎月発生するなら月額、まれな修正だけなら都度払いが合います。月額にする場合は、含まれる作業と上限を書いておきます。
出典
- 総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編(令和8年3月31日)
- 経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月)
- OpenAI「Deprecations」(2026年10月2日確認)
- Anthropic「Model deprecations」(2026年10月2日確認)
- OpenAI Help Center「カスタム GPT の提供終了と移行に関する FAQ」
- n8n Docs「Handle errors gracefully」
- n8n Docs「View all executions」
- n8n Docs「View change history」
- Dify Docs「ログ」
- Dify Docs「バージョン管理」
- Langfuse Docs「Overview」
- Employee Store「使い方ガイド」


